CPUはPCパーツの中で最も壊れにくく、半永久的に使えるというのが一般的な認識です。
私も例外に漏れず、15年近い自作PC歴の中で壊れたCPUに出会ったことは一度もありませんでした。
PCで起こった不具合はたいていメモリ・電源・マザボに起因することがほとんどでした。
今回は、そんなCPUが壊れてしまった時のお話になります。
NASからの突然のメール
QNAPとは主にNAS製品を製造・販売している台湾の電子機器メーカーで、Synologyと並ぶNASメーカーの二大巨頭です。
私もそんなQNAPの製品(TS-877XU-RP)を自宅に導入しており、全てのデジタルデータはそこに集約して管理しています。
QNAPやSynologyのNASは内部に独自のOS(QNAPはQTSと呼ばれている)を持っており、GUIベースで初心者でも簡単にNASをセットアップしたり高度で便利な機能を利用できるようになっております。
そんな便利機能の中の一つに、NASの状態が変化したときに指定したメールアドレスに通知を送ってくれるNotification Centerというものがあります。
ある日、そのNotification Centerから一通のメールが届きました。

「ディスク “Host: Disk 3” のホットリムーブに失敗しました。」
ホットリムーブとは、NASの電源をオンにしたままHDDを抜くことができる機能です。
なぜそのような機能があるかというと、RAIDを組んだ状態でいずれかのHDDに異常が発生した場合に、オンライン状態のままHDDの交換を行うためです。
NASは24時間365日稼働が求められるものですし、RAIDで壊れたHDDを交換した後はリビルド作業が必要になるので基本的には電源が付いたまま交換を行います。
さて、ホットリムーブ機能は本来ユーザーがNAS OS上で指示しなければ機能しないものなのですが、NASを一切触っていないのにも関わらずこの通知が届きました。
触っていないどころかこの日は出張で家にすら居ませんでした。
驚きなのはここからです。
最初のメールが届いてからわずか20秒の間に、以下のメールが立て続けに届いていたのです。




「RAID グループ “1” に不具合が発生しました。」
最後のメールはRAIDグループに致命的なエラーが起きた時に送られるもので、重大度も最大の「Warning」になっています。
リモートアクセスを試してみる
出張中だったため実機の状態が見れず、とりあえずリモートからのアクセスを試してみることにしました。
自宅が停電して、UPS(無停電電源装置)に切り替わった結果のエラーかもと思い、VPNを繋いでまずはルーターの死活をチェックしてみることに。
結果は問題ありませんでした。
続いてNASへのアクセスを試してみたのですが…繋がりません。
そもそもルーター側でNASを認識していないようでした。
NASとルーターは同一の電源回路なので、もし仮に停電してUPSのバッテリーも切れていたとしたらルーターにもアクセスできないはず。
NASに何か尋常じゃない事が起きていることは薄々察したのですが、データが飛んでいる可能性を考えると胃痛が止まらなくなったため、一旦放置して出張中は何も考えずに過ごしておりました。
帰宅してNASを見てみる

出張から急いで帰宅し、すぐにNASの様子を確認しに行きました。
画像はその時の様子ですが、なんと電源が付いています。
しかし、HDDのアクセスランプが全く光っていません。
電源を長押しし、強制停止してから再度起動させてみます。
しかし、HDDの回る音はするものの、いつまで待ってもQTSは立ち上がりませんでした。
何かしら故障であることは確定のようです。
部品を外したり交換したりして原因を特定していく
不具合の原因箇所を特定する時に意識しなければいけないことは「最小構成で試す」「怪しい部分を交換してみる」の二つになります。
この考えはPCのみに限らず、筆者の専門分野である映像システムの不具合を特定する時にも使えます。
今回は以下の順番で原因箇所を絞っていきました。
全ての外部機器を外す
原因特定の準備としてまずは繋がっている線を全て抜きます
別の電源を試してみる
TS-877XU-RPはリダンダント構成になっていて電源ユニットが2つ付いています。
片方のみでも動作するため、片方ずつオンにして試したのですが変化なし。
M.2の拡張カードを外す
データ転送時のキャッシュとして使っていたM.2 SSDの拡張カードを外してみました。
こちらも変化なく。
HDDを全て外す
変化なく
メモリを1枚にする→スロットを変える→全て別物に交換してみる
初期状態だと2枚のメモリが刺さっているので、1枚にしたりスロットを変えたり、またメインPCと同じDDR4メモリだったのでこちらと交換したりして検証してみました。
しかし変化なく
LPC Clock Fixを試してみる
QNAPの一部モデルにはLPCクロックバグという潜在的な問題があるようで、このバグが発症するとNASが起動しなくなってしまうとのことでした。
しかしこれはIntel CPU特有の問題で、私のNASはRyzenを搭載しているため無縁なはずなのですがこの時の私は焦っており神にも祈る気持ちで対策を試すことにしました。
マザーボード上の特定のジャンパピン間を100Ωの抵抗で繋ぐだけの簡単な作業ですが、もちろん変化はありませんでした。
ここまで全く成果が出ず、万事休すかと思っておりました。
最悪同型モデルを購入してHDDだけ移せば復活するのでは…と思い通販サイトを巡り始める始末でした。
最後の砦 CPU交換
NASのマザーボードは特殊規格のため交換はできず、最後に残されたのはCPUだけとなりました。
この時はまだCPUが壊れるイメージを持っていなかったので、諦め半分でした。
しかしたまたまメインPCで使っているCPU(Ryzen7 2700X)とNASのチップセットに互換性があったため、モノは試しと入れ替えてみることにしました。
すると…
あっさり動きました
普通に起動して、普通にアクセスできるようになりました。
ここまでの苦労は何だったのか…
その後、元々NASに入っていたCPU(Ryzen5 3600)と同型機を秋葉原にて購入し交換、修理完了となりました。
CPUも壊れる
今回の教訓は「CPUも壊れる」でした。
それも初期不良やロット不良ではなく、数年間安定稼働してからの突然死なのでなおさら驚きを隠せません。
定格での使用で、エアフローにも問題はなかったと思うのですが…。
しかし改めて調べてみると案外CPU故障の事例は多いようです。
それもここ最近のCPUに多いような気が…高集積化が関係しているのかもしれないですね。
皆様も不可解な現象が起きた時はCPUを疑うようにしてみてください!